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食いしん坊松本が情熱をかけ、食を通じて人に癒され、そして胃袋を満たす物語。
by kurosakaba
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第十話 情熱の旅夢気分
見た目は小振りだが身が厚く、味が驚くほどまろやかで濃厚、まさにこのカ
キは芸術だ!どんな人が造っているのだろう?鹿児島を愛してやまない私だが、
今回は浮気しようと釧路行きのJAS141便に乗りこんだ。

そのマエストロは厚岸にいる。釧路空港から車で一時間、厚岸湖の畔にそのカ
キ処理場はあった。マエストロの名は中嶋 均さん。まるで学者が作業着を着
ている感じで、話を聞けば一言一言にただならぬ情熱を感じる。
厚岸湖の名はアイヌ語で『カキの多い湖』という意味らしい。明治頃から乱獲
や冷夏などで純厚岸のカキは死滅してしまい、今までは宮城系のカキを養殖し
ていたが、平成7年頃から純厚岸産のカキを造ろうという運動が起こり、やっ
と去年出荷が出来るようになった。そのリーダー的存在が中島さんだ。

中島さんは意外にも焼酎が好きで、話を聞くうちに、私はすっかり中島さんと
中嶋さんが造るカキの虜にされてしまい、今度来るときは焼酎を飲みながら語
り合うという約束をし、処理場を後にした。

朝仕事を終わらせ寝ずに来た私に強烈な空腹感とビール欲求感が襲い掛かる。
そこで中嶋さんから教え頂いた、選んだ食材を自分で焼けるお店に行くこと
にした。車を運転している私は、サッポロビールを横目にノンアルビールで
口を湿らす。ほとんど拷問である。しかしカキは妥協出来ない。他の食材に
は目もくれず、純厚岸産のカキを迷わず手に取り、楽しそうにカップルで肉
を焼く人たちに挟まれ、一人黙々とカキの殻を開けては中嶋さんを思い出し
ながら口に運ぶ。周りから見れば怪しかったろう、私の顔は終始半笑いであ
った。

釧路に宿をとった私は、さっそく夜の街へと繰り出した。知らぬ街に来て頼
りになるのはいい店を見つける臭覚と感である。一件目は高級感漂う寿司屋
に飛び込んだ。ネタは良いが人とシャリが気に食わぬ、空腹半ばでまた臭覚
と感を働かせる。二件目は怪しい炉端焼き屋に飛び込んだ。昔の家を思わせ
る店内で、おばちゃんが黙々と地魚を焼いている、当たった!と思った瞬間
転んで顔中バンドエイドだらけのおばちゃんに全てを委ね、ツブ刺し、キン
キ、時鮭、これは癖なのかまたもや半笑いになってしまう。

かなり満足した私は〆のラーメンを見つけるべく、また夜の街に臭覚と感を
研ぎ澄ました。数々のエロスの誘惑があったが、理性よりも財布の方が私を
ラーメン屋に導いてくれたのは言うまでもない。
by kurosakaba | 2003-11-17 00:00 | ストーリー